外資系投資銀行マンの自己研鑽ブログ

都内大学卒業後外資系投資銀行に就職。マーケット分析、本の要約、キャリアなどについて記載します。

良き社会のための経済学 第4章

毎日更新が続いています。

 

第4章研究の日々

本章では経済学の教育と学者の人格および経済学の中身(ゲーム理論モラルハザードなど)を記している。

 

経済学は一見理論的に考察する学問のように思われるが実際は、実証と理論を行ったり来たりすることにより発展してきた。そういう意味では、工学系などの自然科学と似たようなものがある。

 

実際、工学では目的を明確化することにより微小なものを無視したり近似することによりエッセンスの抽出を行うのと同様に、経済学もゴールを設定し主体の行動を近似や仮定を置いきモデルを構築する。

そして、経済モデルの結果に対して計量経済学を用いて実証する。主流な検証方法は2つあり。1つ目がフィールド実験である。あるサンプル群を用意し一方には何らかの管理を施し、他方は何も行わず時間が経過後に2つの群の差を観察するといった方法である。2つ目はラボラトリー実験で学生と教授などでそれぞれ役割を演じるといったものである。前者は普遍性が高いがコストがかかる、後者は再現性は高いが空想で行われていることから、行動にバイアスが生じてしまう。

 

この方法論を用いることで、政策決定の提言をおこなう。しかし、前者は普遍性が高いがコストがかかる、後者は再現性は高いが空想で行われていることから、行動にバイアスが生じてしまうことに加え、研究者の現象の理解が不十分であったり、全ての情報を入手できないという点から、経済学を神聖化して正しいというのは危険である。

 

さらに、経済学は時代の潮流があることにも注意されたい。

1970年以前は経済学はケインズ理論が主流であったが徐々に批判的な動きを伴っていくつもの学派がつくられ現在に至る。経済学者の1つの目標として数々あるモデルを1つにまとめようとしているが、現在達成されてはいない。

 

このような1つにまとめることができない理由として人の行動によるものであるが、人の行動を扱う学問としてゲーム理論と情報の経済学がある。

ゲーム理論は相手の行動を適切に予想し、自分の行動どうあれば適切かを選ぶものである。ゲーム理論では、複数のプレイヤーが相互にどのような影響を与えるのを完全に理解し、その中で最も最適な行動をとることを均衡と定義している(なお、均衡は複数ある場合がある)。

もう1つが情報の経済学でモラルハザード逆選択だ。モラルハザードプリンシパル・エージェント問題のようなある契約後一方が利己的な行動をとることにより、もう一方が損をすることを指す。逆選択は、情報の非対称性を利用し、自分に有意な選択を行うことである。

だが、このようなプリンシパルが不利益を被らないために4つの行動もある。

ダイナミクスー契約は繰り返されることが多く一度不利益を被った側は学び行動を変化させる

②階層ープリンシパルとエージェントの2階層ではなく代理人を挟むことで監視を行う

③情報に通じたプリンシパルー不利益を被ることを前提に有利な条件で契約する

④公的な組織-弁護士などを通じて説明責任を果たすことでエージェントの追加的な利益を防ぐ

 

話は変わり、経済学の教育と学者の人格である。

現在経済学はアメリカが1強であり経済学のランキング100大学のうち半分がアメリカを占めている。これはアメリカが博士の輩出が多いことと、実績主義の大学運営が行われていることによる。一方欧州ではアメリカに優秀な人材が流れてしまっている。

その結果欧州の大学の質が衰退し、どの大学に頼ればいいのか学生のみならず公的機関や企業もわからなくなってきている。そこで重要になってくるのはランキングである。学者が各大学の論文や雑誌を評価しランキングをつけるのが最適だと筆者はのべている。

 

また、フランスの大学の向上として人材の流動性を説いている。英米では博士課程を終えた学生は同じ大学に留まることを許されず異なる大学で研究することが求められる。経済学は意見がことなるものであり、違う大学に足を踏み入れることにより新たな着眼点を得ることができるためである。

 

特に、経済を学ぶ者は学問として利己的な行動が正当化されるため、利己的な行動をとるものが多いという。さらに、経済学者は1つの考えに導かれて理論を構築する(すべてを包摂するという前提)のではなく、さまざまなアプローチをとり仮説検証を繰り返し判断を下す。